手軽にできる住まいのデコレーションと改修術

2025年10月
  • 団地の狭いキッチンを快適な空間へ変える

    台所

    団地での暮らしにおいて、多くの人がリフォームで改善したいと願う場所の一つが「キッチン」です。昭和の時代に設計された団地のキッチンは、現代のライフスタイルと比べると、どうしても狭く、収納が少なく、作業スペースも限られていることがほとんどです。しかし、リフォームの工夫次第で、このコンパクトなキッチンを、驚くほど機能的で、料理が楽しくなるような快適な空間へと生まれ変わらせることが可能です。団地のキッチンリフォームでまず検討したいのが、レイアウトの変更です。古い団地に多いのが、壁に向かって作業する独立型の「壁付けキッチン」です。このレイアウトは、背後にダイニングテーブルを置けるなど、省スペースである一方、リビングに背を向けて作業するため、孤独感を感じやすいというデメリットがあります。もし、構造上の制約が許すのであれば、リビングダイニングの方を向いて作業できる「対面式キッチン」への変更を検討してみましょう。壁を取り払ってカウンターを設けることで、開放感が生まれ、料理をしながら家族と会話したり、子どもの様子を見守ったりすることができます。ただし、壁が構造壁である場合や、排気ダクトの位置によっては、対面化が難しいケースもあるため、専門家との入念な相談が必要です。レイアウトの変更が難しい場合でも、システムキッチンを新しいものに交換するだけで、使い勝手は飛躍的に向上します。最近のコンパクトなシステムキッチンは、限られたスペースを最大限に活用するための工夫が満載です。引き出し式の収納は、奥の物まで楽に取り出すことができ、従来の開き戸タイプに比べて収納量が格段にアップします。食洗機をビルトインすれば、シンク周りがすっきりと片付き、家事の負担も軽減されます。ワークトップの素材を、熱や傷に強い人工大理石やステンレスにすれば、調理の効率も上がります。収納力をさらにアップさせるためには、壁面を有効活用することが鍵となります。コンロ周りの壁にマグネットパネルを取り付ければ、調理器具やお玉などを浮かせて収納できます。手の届きやすい位置にオープンな棚(見せる収納)を設ければ、よく使う調味料や食器を、おしゃれに、かつ機能的に配置することが可能です。限られた空間だからこそ、一つひとつの要素を吟味し、自分たちの調理スタイルに合わせて最適化していきます。

  • 浴室リフォームとダウンライトの賢い関係

    浴室

    一日の疲れを洗い流し、心身ともにリラックスする場所である浴室。このプライベートな空間を、より安全で、快適で、そして美しい場所へと変えるリフォームにおいて、照明選びは非常に重要な要素です。特に、天井がすっきりとし、空間を広く見せる効果のあるダウンライトは、現代の浴室照明の主流となっています。浴室でダウンライトを選ぶ際に、まず絶対条件となるのが「防湿・防雨形」の器具であることです。浴室は、湯気や湿気が常に充満している特殊な環境です。通常の屋内用のダウンライトを使用すると、湿気が器具の内部に侵入し、故障や漏電、感電といった重大な事故に繋がる危険性があります。そのため、JIS規格などで定められた、高い防水・防湿性能を持つ専用の器具を選ぶことが法規上も義務付けられています。器具の仕様書に「防湿形」「防雨形」といった表記があるか、あるいは「IPコード」と呼ばれる保護等級が、浴室での使用に適したレベル(IP43以上が目安)であるかを必ず確認しましょう。次に考えたいのが、光の色と配置です。浴室での過ごし方は人それぞれです。一日の始まりにシャワーを浴びてシャキッとしたい、という場合は、心身を覚醒させる効果のある、白っぽい光の「昼白色」が適しています。一方で、夜、湯船に浸かってゆっくりとリラックスしたい、という場合は、心を落ち着かせる効果のある、オレンジ色がかった温かみのある「電球色」がおすすめです。最近では、壁のスイッチで光の色を切り替えられる「調色機能」付きのダウンライトも人気があり、時間帯や気分に合わせて最適な光環境を選ぶことができます。配置については、浴室全体を均一に照らすように、複数のダウンライトをバランス良く設置するのが基本です。特に、洗い場と浴槽の上、それぞれの真上に配置すると、影ができにくく、安全で快適なバスタイムに繋がります。さらに、光の明るさを調節できる「調光機能」を取り入れると、浴室空間の楽しみ方はさらに広がります。普段はしっかりとした明るさで安全を確保し、リラックスしたい時には光を絞って、まるで高級ホテルのバスルームのような、ムーディーで落ち着いた雰囲気を演出することも可能です。安全性を第一に、機能性とデザイン性を両立させる。それが、快適なバスルームを実現するための、賢いダウンライト計画です。

  • 壁DIY成功は下準備と道具で決まる

    壁のリフォームDIYに挑戦しようと決意した時、多くの人は、どんな色のペンキを塗ろうか、どんな柄の壁紙を張ろうかと、デザインを選ぶ楽しみに心を躍らせるでしょう。しかし、そのDIYが成功するか、あるいは残念な結果に終わるかを左右するのは、実は、壁紙や塗料そのものではなく、その前の地味で目立たない「下準備」と、適切な「道具」の選択にかかっていると言っても過言ではありません。この土台となる部分を疎かにしては、決して美しい仕上がりは望めません。まず、すべての壁DIYに共通する最も重要な下準備が、「養生(ようじょう)」です。養生とは、塗料や糊が付着してはいけない床や窓枠、コンセント、家具などを、マスキングテープやマスカー(マスキングテープとビニールシートが一体化したもの)で保護する作業のことです。この作業をどれだけ丁寧に行うかで、仕上がりの美しさが決まります。特に、壁と天井の境目や、窓枠との境界線にマスキングテープをまっすぐに貼ることは、プロのようなシャープな仕上がりを実現するための絶対条件です。面倒に感じられる作業ですが、ここを乗り越えれば、後の作業は安心して大胆に進めることができます。次に重要なのが、「下地処理」です。これから新しい壁紙を張ったり、塗装をしたりする壁の表面が、どのような状態かを確認し、適切に整える作業です。壁に画鋲の穴やひび割れがある場合は、ホームセンターなどで手に入る「壁用のパテ」で埋めて、平らにしておきます。既存の壁紙が剥がれかけている場合は、その部分を剥がし、段差ができないように処理します。また、壁に付着したホコリや油汚れは、塗料や糊の密着を妨げる大きな原因になります。固く絞った雑巾などで、壁全体の汚れを綺麗に拭き取っておきましょう。これらの下準備と並行して、必要な道具を揃えます。壁紙DIYなら、カッターナイフ、ヘラ(スムーサー)、ジョイントローラー、さしがね(定規)。塗装DIYなら、ローラー、刷毛(ハケ)、塗料トレイ。これらは、数百円から千円程度で購入できるものばかりですが、あるとないとでは作業効率と仕上がりが全く異なります。「初心者セット」として、必要な道具が一式揃った便利な商品も販売されています。

  • 賃貸でもOK現状回復可能な床DIY

    知識

    「自分の住む部屋の床を、もっと好みのデザインに変えたい」。そう思っても、賃貸住宅に住んでいるために、リフォームを諦めてしまっている方は多いのではないでしょうか。しかし、最近では、壁や床に傷をつけず、退去時には元通りに戻せる「現状回復可能」な床のDIY方法がたくさん登場しています。工夫次第で、賃貸住宅でも自由におしゃれな床リフォームを楽しむことができるのです。現状回復可能な床DIYの代表格が、「置くだけタイプ」のフロアタイルです。その名の通り、接着剤を使わずに、既存の床の上に並べていくだけで施工できるため、床を傷つける心配がありません。退去時には、並べたタイルを一枚一枚剥がして撤去するだけで、元の床に戻すことができます。種類によっては、裏面に滑り止め加工が施されており、日常生活でずれることもほとんどありません。畳の部屋を手軽にフローリングに変えたい場合には、「ウッドカーペット」が最適です。畳の上に広げて敷くだけなので、畳を傷つけることなく、簡単に洋室の雰囲気を実現できます。これも、退去時には丸めて撤去するだけです。また、クッションフロアを使いたい場合には、少し工夫が必要です。通常、クッションフロアは両面テープや接着剤で固定しますが、これを直接床に貼ってしまうと、剥がす際に床を傷めたり、糊が残ったりしてしまいます。そこで有効なのが、「マスキングテープ」を活用する方法です。まず、床の周囲や、クッションフロアの継ぎ目になる部分に、幅の広い養生用のマスキングテープを貼ります。そして、そのマスキングテープの上に、強力な両面テープを貼り、クッションフロアを固定するのです。この方法であれば、両面テープは床に直接触れることがないため、剥がす際もマスキングテープごと綺麗に剥がすことができ、現状回復が可能になります。これらの方法を使えば、法律や契約の制約に縛られることなく、自分の創造性を発揮して、住まいをカスタマイズする楽しみを味わうことができます。ただし、DIYを始める前には、必ず賃貸契約書の内容を確認し、大家さんや管理会社に一度相談してみるのが、トラブルを避けるための賢明な方法です。

  • リビングを格上げするダウンライトの配置術

    知識

    家族が集い、くつろぎの時間を過ごすリビングは、住まいの中で最も多様な過ごし方がされる空間です。そのため、リビングの照明計画には、様々なシーンに対応できる柔軟性と、心地よい雰囲気を演出するデザイン性が求められます。この複雑な要求に見事に応えてくれるのが、ダウンライトを巧みに配置するテクニックです。リビングを上質で快適な空間へと格上げするための、効果的なダウンライトの配置術をご紹介します。まず、リビング全体の明るさを確保するベース照明として、光が広がる「拡散タイプ」のダウンライトを、天井全体に均等に配置する方法があります。この際、部屋の中央に集中させるのではなく、壁際にもバランス良く配置するのがポイントです。壁面が明るくなることで、空間の広がりが感じられ、圧迫感を軽減できます。ダウンライト同士の間隔は、天井の高さにもよりますが、おおよそ90cmから120cm程度が目安とされています。次に、空間に奥行きと表情を与えるためのテクニックとして、「ウォールウォッシャー」という手法があります。これは、壁際に配置したダウンライトで、壁面を洗い流すように光を当てる方法です。壁に美しい光のグラデーションが生まれ、空間が広く感じられるだけでなく、壁の素材感(塗り壁やタイルなど)を際立たせ、上質な雰囲気を演出します。テレビの背面の壁にこの手法を用いると、テレビ画面との輝度差が緩和され、目が疲れにくくなるという効果も期待できます。さらに、特定の場所を際立たせる「アクセント照明」として、光を集める「集光タイプ」のダウンライトを活用します。ソファの横に置いた観葉植物や、壁に飾ったアート、お気に入りの家具などをピンポイントで照らすことで、そこが空間の主役となり、視覚的なメリハリが生まれます。これらの異なる役割を持つダウンライトを組み合わせ、さらに「調光機能」を取り入れることで、リビングの照明は完成します。家族で団らんする時は全体を明るく、映画を観る時はテレビ周り以外の光を絞り、夜一人で静かに過ごす時は間接照明だけにする。シーンに合わせて光を自在にコントロールすることで、リビングはもっと豊かで心地よい場所になるのです。

  • 漆喰と珪藻土で塗り壁DIYに挑戦

    自然素材ならではの温かみのある風合いと、優れた機能性で人気を集めているのが、「漆喰(しっくい)」や「珪藻土(けいそうど)」を使った塗り壁です。左官職人がコテを使って仕上げる専門的なイメージが強い塗り壁ですが、近年では、DIY初心者でも扱いやすいように調整された製品が数多く販売されており、自分の手で挑戦する人が増えています。ビニールクロスでは表現できない、独特の質感と陰影を持つ塗り壁は、空間に上質な落ち着きと深みを与えてくれます。漆喰や珪藻土の最大の魅力は、その優れた「調湿効果」にあります。これらの素材には、目に見えない無数の小さな穴(細孔)が空いており、室内の湿度が高い時には湿気を吸収し、逆に乾燥している時には湿気を放出するという、まるで呼吸するような働きをします。これにより、部屋の湿度を一年を通して快適な状態に保ちやすくし、結露やカビの発生を抑制する効果が期待できます。また、消臭効果にも優れており、ペットやタバコ、生活臭などを吸着・分解してくれるため、空気をクリーンに保つことができます。DIY用の塗り壁材は、あらかじめ水と練られたペースト状のものが多く、缶や箱の蓋を開ければすぐに塗り始められる手軽さが人気です。施工は、まず壁紙の張り替えや塗装と同様に、丁寧な養生から始めます。塗り壁材は、床や柱に付着すると落とすのが大変なため、特に念入りに行いましょう。既存の壁がビニールクロスの場合は、その上から直接塗れるタイプがほとんどですが、剥がれや汚れがひどい場合は、クロスを剥がして下地処理をする必要があります。塗り方は、コテやローラー、中には刷毛で塗れるタイプもあります。コテを使う場合は、まず下塗りとして薄く全体に塗り広げ、それが乾いてから上塗りとして厚みをつけながら仕上げていきます。コテの動かし方によって、フラットな仕上げや、あえて跡を残したパターン仕上げなど、様々な表情を創り出すことができるのが、塗り壁DIYの醍醐味です。作業は体力と根気が必要ですが、世界に一つだけの、自分の手仕事の跡が残る壁が完成した時の感動は、他のDIYでは味わえない特別なものとなるでしょう。

  • なぜ今、団地リフォームが注目されるのか

    知識

    かつて、日本の高度経済成長期に数多く建設された団地。多くの人にとって、どこか懐かしく、少し古めかしいイメージがあるかもしれません。しかし今、その団地が、若い世代やデザインに敏感な人々から、新たな住まいの選択肢として大きな注目を集めています。その背景にあるのが、リフォームやリノベーションによって、団地が持つ潜在能力を最大限に引き出し、自分たちらしい理想の暮らしを実現できるという魅力です。団地が再評価されている理由の一つに、その優れた「立地」が挙げられます。多くの団地は、駅やバス停、学校、スーパーマーケット、公園などが計画的に配置された、生活利便性の高い場所に建てられています。都心へのアクセスも良好な場合が多く、これは現代のライフスタイルにおいて非常に大きなアドバンテージとなります。また、敷地内に豊かな緑が配置され、建物同士の間隔がゆったりと取られていることも、都会の密集した住宅地にはない、団地ならではの魅力です.手頃な「価格」も、団地が選ばれる大きな理由です。同程度の広さや立地のマンションに比べて、中古の団地は比較的安価に購入できるケースが多く、その分、リフォームにお金をかけることができます。つまり、建物の購入費用を抑え、浮いた予算で内装や設備を自分の好みに合わせて一新し、新築同様、あるいはそれ以上の価値を持つ住まいを創り上げることが可能なのです。そして何より、団地リフォームの最大の魅力は、その「自由度の高さ」にあります。画一的に作られた間取りも、リフォームによって壁を取り払い、広々とした一つのLDKにしたり、趣味のための特別な空間を作ったりと、住む人のライフスタイルに合わせて大胆に作り変えることができます。古いからこそ、壊すことに躊躇がなく、ゼロから空間をデザインする楽しみがあるのです。レトロな雰囲気を活かしつつ、モダンなデザインを融合させることで、新築物件にはない、味わい深く個性的な住まいが生まれます。立地の良さ、手頃な価格、そして無限の可能性を秘めた自由な空間。団地はもはや、単なる古い集合住宅ではありません。それは、自分たちの手で理想の暮らしを創造するための、最高のキャンバスなのです。

  • 壁DIYで失敗しないための重要なコツ

    自分の手で部屋を生まれ変わらせる壁のDIYは、大きな達成感を得られる素晴らしい体験です。しかし、初めての挑戦では、思わぬ落とし穴にはまってしまい、「こんなはずではなかった」と後悔するケースも少なくありません。美しい仕上がりを実現し、DIYを成功させるためには、よくある失敗例とその原因を知り、それを防ぐための重要なコツを押さえておくことが不可欠です。壁紙のDIYで最も多い失敗が、貼り付けた壁紙に「シワや空気が入ってしまう」ことです。これは、壁紙を貼る際に、中心から外側に向かって空気を抜く作業が不十分な場合に起こります。焦らず、専用のヘラ(スムーサー)を使って、一方向に優しく、しかし確実に空気を押し出していくことが重要です。また、二枚目以降の壁紙の「継ぎ目が目立ってしまう」という失敗もよくあります。これは、壁紙同士をぴったりと突き合わせて貼ろうとすることで起こりがちです。プロは、一枚目の壁紙に二枚目を数センチ重ねて貼り、その重なった中央部分をカッターで一直線に切り落とす「重ね切り(ジョイントカット)」という技術を使います。これにより、隙間なく、かつ継ぎ目がほとんど目立たない美しい仕上がりが実現できます。塗装のDIYでよくある失敗は、「塗りムラ」です。早く終わらせようとして、一度にたくさんのペンキをローラーにつけて厚塗りしてしまうと、液だれやムラの原因になります。ペンキは、トレイの上でローラーによく馴染ませ、余分な塗料をしっかりと落としてから、薄く均一に塗るのが基本です。そして、完全に乾いてから二度塗りすることで、プロのような美しい塗装面に仕上がります。また、塗装において仕上がりの美しさを左右するのが、養生で使った「マスキングテープを剥がすタイミング」です。ペンキが完全に乾ききってから剥がすと、塗膜ごとパリパリと剥がれてしまい、境界線がガタガタになってしまうことがあります。ペンキがまだ少し生乾きの状態、いわゆる半乾きのタイミングで、壁に対して斜め下方向にゆっくりと剥がすのが、美しい直線を生み出すためのプロのコツです。これらの失敗例と対策から分かるように、壁DIYの成功の秘訣は、派手なテクニックではなく、丁寧な下準備と、基本に忠実な作業を、焦らず着実に行うことにあるのです。

  • ダウンライトと間接照明で創る癒しの空間

    知識

    リフォームで上質で心地よい空間を創り出すために、ダウンライトと並んで非常に効果的な照明手法が「間接照明」です。間接照明とは、光源が直接目に入らないように、光を一度、壁や天井、床に当てて、その反射した柔らかい光で空間を照らす方法です。この間接照明と、機能的なダウンライトを巧みに組み合わせることで、ホテルのスイートルームのような、安らぎと高級感に満ちた癒しの空間をデザインすることができます。ダウンライトが、必要な場所を的確に照らす「直接照明」であるのに対し、間接照明は、空間全体を均一で柔らかな光で満たすのが得意です。光源が見えないため、眩しさがなく、非常にリラックスした雰囲気を作り出します。壁や天井の素材感を優しく浮かび上がらせ、空間に豊かな表情と奥行きを与えてくれるのも、間接照明ならではの魅力です。リフォームで間接照明を取り入れる代表的な手法が、「コーブ照明」と「コーニス照明」です。コーブ照明は、天井を壁際で一段折り上げて、その内側にライン状のLED照明などを隠し、天井面を照らす方法です。光が天井全体に広がり、部屋が実際よりも高く、広く感じられます。一方、コーニス照明は、壁の上部や下部に造作した垂れ壁や幕板の裏に光源を隠し、壁面を照らす方法です。光が壁を伝って美しいグラデーションを描き、落ち着いた雰囲気を演出します。テレビボードの下や、ベッドのヘッドボードの裏に光源を仕込むのも、効果的な間接照明の手法です。この間接照明を、空間全体のベースとなるアンビエントな光(環境光)として使い、生活に必要な機能的な光をダウンライトで補う、というのが、理想的な照明計画の考え方です。例えば、リビングであれば、まずコーブ照明で部屋全体を柔らかく照らし、ソファで本を読む手元や、ダイニングテーブルの上には、集光性の高いダウンライトで必要な明るさをプラスします。そして、壁に飾ったアートは、角度が変えられるユニバーサルダウンライトでスポット的に照らす。このように、異なる役割を持つ光を重ね合わせる(レイヤリングする)ことで、光環境は非常に豊かになります。調光機能を使って、シーンに合わせてそれぞれの光の明るさをコントロールすれば、その日の気分に合わせた、最適な癒しの空間をいつでも創り出すことができるのです。

  • 団地リフォームで実現した三つの家族の物語

    生活

    リフォームによって、団地はそこに住む家族のライフスタイルを映し出す、唯一無二の舞台へと生まれ変わります。ここでは、団地リフォームを通じて、それぞれの理想の暮らしを実現した、三つの家族の物語をご紹介します。一つ目は、都心へのアクセスが良い団地を選んだ、共働きのAさん夫婦と小学生の息子の三人家族の物語です。彼らが最も望んだのは、家族が自然と集まる、広々としたリビングでした。リフォームでは、キッチンと隣接していた和室の壁を撤去し、約18畳の広々としたLDKを実現。キッチンは、リビング全体を見渡せる対面式のカウンターキッチンに変更しました。これにより、妻は料理をしながらリビングで宿題をする息子の様子を見守ることができ、夫もカウンターで晩酌をしながら、キッチンに立つ妻との会話を楽しめるようになりました。また、玄関からリビングを通って、子ども部屋や寝室へ抜けられる「回遊動線」を確保したことで、朝の忙しい時間帯も家族の動きがスムーズになり、日々の小さなストレスが解消されたと言います。二つ目は、子育てを終え、これからの人生を趣味と共に楽しみたいと考える、Bさん夫婦の物語です。彼らが選んだのは、窓から豊かな緑が見える、少し郊外の団地でした。リフォームのテーマは「夫婦それぞれのアトリエ」。細かく仕切られていた三つの部屋のうち、二つの壁を取り払い、大きなワンルームのような空間を創り出しました。その空間を、本棚やパーテーションで緩やかに仕切り、夫の書斎スペースと、妻が絵を描くためのアトリエスペースを確保。残りの一部屋は、来客用の寝室として残しました。床には足触りの良い無垢材を使い、壁は自分たちで珪藻土を塗るDIYにも挑戦。自分たちの「好き」が詰まった空間で、夫婦それぞれの時間を尊重しながら、同じ気配の中で過ごせる暮らしに、大きな満足感を感じています。三つ目は、在宅でデザイナーとして働く、単身者のCさんの物語です。彼女がリフォームで重視したのは、仕事とプライベートの切り替えができる、コンパクトで機能的な空間でした。限られたワンルームの空間に、ガラスのパーテーションを設置し、ワークスペースとベッドスペースを緩やかにゾーニング。日中は仕事に集中し、夜は間接照明でリラックスできる空間へと切り替えられるように工夫しました。