壁のリフォームDIYに挑戦しようと決意した時、多くの人は、どんな色のペンキを塗ろうか、どんな柄の壁紙を張ろうかと、デザインを選ぶ楽しみに心を躍らせるでしょう。しかし、そのDIYが成功するか、あるいは残念な結果に終わるかを左右するのは、実は、壁紙や塗料そのものではなく、その前の地味で目立たない「下準備」と、適切な「道具」の選択にかかっていると言っても過言ではありません。この土台となる部分を疎かにしては、決して美しい仕上がりは望めません。まず、すべての壁DIYに共通する最も重要な下準備が、「養生(ようじょう)」です。養生とは、塗料や糊が付着してはいけない床や窓枠、コンセント、家具などを、マスキングテープやマスカー(マスキングテープとビニールシートが一体化したもの)で保護する作業のことです。この作業をどれだけ丁寧に行うかで、仕上がりの美しさが決まります。特に、壁と天井の境目や、窓枠との境界線にマスキングテープをまっすぐに貼ることは、プロのようなシャープな仕上がりを実現するための絶対条件です。面倒に感じられる作業ですが、ここを乗り越えれば、後の作業は安心して大胆に進めることができます。次に重要なのが、「下地処理」です。これから新しい壁紙を張ったり、塗装をしたりする壁の表面が、どのような状態かを確認し、適切に整える作業です。壁に画鋲の穴やひび割れがある場合は、ホームセンターなどで手に入る「壁用のパテ」で埋めて、平らにしておきます。既存の壁紙が剥がれかけている場合は、その部分を剥がし、段差ができないように処理します。また、壁に付着したホコリや油汚れは、塗料や糊の密着を妨げる大きな原因になります。固く絞った雑巾などで、壁全体の汚れを綺麗に拭き取っておきましょう。これらの下準備と並行して、必要な道具を揃えます。壁紙DIYなら、カッターナイフ、ヘラ(スムーサー)、ジョイントローラー、さしがね(定規)。塗装DIYなら、ローラー、刷毛(ハケ)、塗料トレイ。これらは、数百円から千円程度で購入できるものばかりですが、あるとないとでは作業効率と仕上がりが全く異なります。「初心者セット」として、必要な道具が一式揃った便利な商品も販売されています。