家族が集い、くつろぎの時間を過ごすリビングは、住まいの中で最も多様な過ごし方がされる空間です。そのため、リビングの照明計画には、様々なシーンに対応できる柔軟性と、心地よい雰囲気を演出するデザイン性が求められます。この複雑な要求に見事に応えてくれるのが、ダウンライトを巧みに配置するテクニックです。リビングを上質で快適な空間へと格上げするための、効果的なダウンライトの配置術をご紹介します。まず、リビング全体の明るさを確保するベース照明として、光が広がる「拡散タイプ」のダウンライトを、天井全体に均等に配置する方法があります。この際、部屋の中央に集中させるのではなく、壁際にもバランス良く配置するのがポイントです。壁面が明るくなることで、空間の広がりが感じられ、圧迫感を軽減できます。ダウンライト同士の間隔は、天井の高さにもよりますが、おおよそ90cmから120cm程度が目安とされています。次に、空間に奥行きと表情を与えるためのテクニックとして、「ウォールウォッシャー」という手法があります。これは、壁際に配置したダウンライトで、壁面を洗い流すように光を当てる方法です。壁に美しい光のグラデーションが生まれ、空間が広く感じられるだけでなく、壁の素材感(塗り壁やタイルなど)を際立たせ、上質な雰囲気を演出します。テレビの背面の壁にこの手法を用いると、テレビ画面との輝度差が緩和され、目が疲れにくくなるという効果も期待できます。さらに、特定の場所を際立たせる「アクセント照明」として、光を集める「集光タイプ」のダウンライトを活用します。ソファの横に置いた観葉植物や、壁に飾ったアート、お気に入りの家具などをピンポイントで照らすことで、そこが空間の主役となり、視覚的なメリハリが生まれます。これらの異なる役割を持つダウンライトを組み合わせ、さらに「調光機能」を取り入れることで、リビングの照明は完成します。家族で団らんする時は全体を明るく、映画を観る時はテレビ周り以外の光を絞り、夜一人で静かに過ごす時は間接照明だけにする。シーンに合わせて光を自在にコントロールすることで、リビングはもっと豊かで心地よい場所になるのです。
リビングを格上げするダウンライトの配置術