網戸と窓枠の間に生じる隙間は、多くの場合、網戸のフレームやネットの劣化が原因だと考えられがちです。しかし、その根本的な原因を深く探っていくと、非常に重要な役割を担っているにもかかわらず、普段あまり意識されることのない部品、戸車の存在に行き着きます。戸車とは、網戸の下部フレームの両端に取り付けられた小さな車輪のことで、網戸がレールの上をスムーズに移動するための基幹部品です。この戸車が正常に機能している限り、網戸はレールに対して水平を保ち、窓枠との間に均一な密閉性を維持します。しかし、この戸車が経年劣化によって摩耗、変形、あるいは破損すると、網戸全体のバランスが崩れ、様々な問題を引き起こします。まず、戸車がすり減ると網戸の高さが物理的に低くなります。これにより、網戸の上部とサッシの間に隙間が生じます。また、左右の戸車の摩耗具合に差が出ると、網戸が傾いた状態になり、縦方向のフレームとサッシの間にも隙間ができてしまいます。これが、虫が侵入する直接的な原因となるのです。さらに、劣化した戸車は回転がスムーズでなくなるため、網戸の開閉が重くなったり、ガタガタと異音を発したりします。無理に力を入れて開閉を繰り返すと、戸車だけでなく網戸のフレーム自体にも過度な負担がかかり、変形を助長するという悪循環に陥ります。多くの戸車には、高さを微調整するためのネジが備わっています。軽度の隙間であれば、この調整ネジをドライバーで回して戸車の高さを変え、網戸を水平にすることで解決できる場合があります。しかし、戸車自体が割れていたり、車輪が固着して動かなかったりする場合は、部品そのものを交換するしかありません。幸い、多くの戸車は汎用的な規格で作られており、ホームセンターなどで入手可能です。網戸の隙間問題に直面した時、まず疑うべきは戸車の状態です。この小さな部品が、実は快適な室内環境を維持するための鍵を握っているのです。
網戸の隙間問題は戸車が鍵を握る