床のリフォームDIYにおいて、最も一般的な工法が、既存の床の上に新しい床材を重ねて張る「重ね張り(上張り)」です。古い床を剥がす必要がないため、DIY初心者でも挑戦しやすく、多くのメリットがあります。しかし、その一方で、いくつか知っておくべき注意点も存在します。重ね張りの最大のメリットは、その手軽さとコストパフォーマンスの高さです。既存の床を剥がす作業は、大きな音や大量のホコリが発生し、剥がした床材の処分にも手間と費用がかかります。重ね張りであれば、これらの大変な工程をすべて省略できるため、工期を大幅に短縮でき、解体費用や廃材処分費もかかりません。DIYにかかる総コストを、大きく抑えることができるのです。また、床が二重になることで、床の強度が上がり、遮音性や断熱性が向上するという副次的な効果も期待できます。特に、階下への足音が気になるマンションなどでは、遮音性能の向上が大きなメリットとなるでしょう。一方で、重ね張りDIYには、いくつかの重要な注意点があります。最も注意すべきは、「床の高さが変わる」ことです。新しい床材の厚みの分だけ、床面が数ミリから十数ミリ高くなります。このわずかな変化が、様々な問題を引き起こす可能性があります。例えば、リビングのドアが床に擦れて開かなくなってしまったり、クローゼットの扉が開閉できなくなったりするケースです。施工を始める前に、ドアの下の隙間(クリアランス)が十分にあるか、必ず確認する必要があります。もし隙間が足りない場合は、ドアの蝶番を調整したり、ドアの下部をカンナやのこぎりで削ったりといった追加の作業が必要になります。また、隣の部屋との間に段差ができてしまうことにも注意が必要です。特に、バリアフリーを意識しているご家庭では、この段差がつまずきの原因となり、かえって危険な状況を生んでしまうこともあります。見切り材などをうまく使って、段差を緩やかにする工夫が求められます。さらに、重ね張りをする大前提として、下地となる既存の床の状態が良好であることが必須です。もし、床がブカブカと沈んだり、ひどい床鳴りがしたりする場合は、下地の木材が腐食したり、シロアリの被害に遭っていたりする可能性があります。