長年、多くの住宅リフォームに携わってきた建築家が、デザインについて語るときに必ず強調するのは「美しさと機能性はコインの表裏である」という事実です。世の中には一見すると美術館のように美しいが、実際に住んでみると掃除がしにくかったり、物の置き場に困ったりする家が少なくありません。しかし、真に優れたデザインとは、日々の家事や生活の動作が流れるようにスムーズに行え、その結果として空間が常に美しく保たれる状態を指します。例えば、キッチンに美しい天然石のカウンターを採用したいという要望があった場合、建築家はその石がどれほど水や油に強いか、あるいは傷がついたときにどう修復できるかという現実的な側面をまず検討します。もしメンテナンスが困難であれば、石の風合いを完璧に再現しつつ高い耐久性を持つ大セラミックタイルを提案します。これが、機能性を土台にしたデザインの選択です。また、収納計画においても、ただ隠すのではなく「何をどこに置くか」という動線をデザインに落とし込みます。掃除機を取り出す一歩、洗濯物を畳む一分が短縮されるように設計された空間は、住む人の心に余裕を生み出します。その余裕こそが、部屋を美しく整えようという意欲に繋がり、結果としてデザインが持続するのです。リフォームの打ち合わせにおいて、施主が「こうしたい」という断片的なイメージを伝えるのに対し、建築家はそれを生活という一本の線に繋ぎ直します。素材の触り心地、扉を開けるときの音、足元を抜ける風の通り道。それら五感すべてで感じる心地よさを積み重ねた先に、時代に左右されない普遍的な美しさが現れます。デザインとは、単なる流行のスタイルをなぞることではありません。住む人の生活を深く理解し、その日常を最も美しく輝かせるための「解決策」を形にすることなのです。美しさと機能性が互いに支え合い、高め合うような黄金比を見出したとき、リフォームは完成を超えて、豊かな人生を支えるインフラへと進化を遂げるのです。
建築家が語る美しさと機能性の黄金比